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Science サイエンス

BPAとLAT1は、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)において非常に重要な要素です。

BPA(ボロノフェニルアラニン /L-para-boronophenylalanine)

役割: ホウ素をがん細胞に届けるための薬剤です。

特徴: 必須アミノ酸であるフェニルアラニンによく似た構造を持ち、その一部にホウ素を含む化合物です。アミノ酸としての構造をもつため、がん細胞に多く発現しアミノ酸の取り込みを担うLAT1に認識され、がん細胞内へ取り込まれます。

LAT1( L-type Amino Acid Transporter 1)

役割: 細胞の表面に存在し、アミノ酸を細胞内へ運ぶ輸送タンパク質です。がん細胞が成長するために必要なアミノ酸を取り込むとともに、アミノ酸に似た構造をもつBPAの取り込みにも関わります。

特徴: 活発に増殖するがん細胞は、多くのアミノ酸を必要とするため、細胞表面にLAT1を多く発現しています。一方、多くの正常細胞では、主にLAT2などの別のアミノ酸輸送タンパク質が働いています。このように、LAT1が多くのがん細胞で高く発現する性質を利用することで、BPAをがん細胞へ選択的に取り込ませることができます。

がん細胞におけるLAT1を介したBPAの取り込み

BPAががん細胞に取り込まれる主な過程は、以下の通りです。

1.BPAの投与ホウ素を含み、アミノ酸としての構造をもつBPAを体内に投与します。

2.LAT1を介したがん細胞への取り込み 活発に増殖するがん細胞は多くのアミノ酸を必要とするため、細胞表面にLAT1を多く発現しています。BPAはアミノ酸としての構造をもつことからLAT1に認識され、アミノ酸と同じようにがん細胞内へ取り込まれます。

3.がん細胞内へのBPAの集積 多くのがん細胞ではLAT1が高く発現しているため、BPAはLAT1を介して効率よく取り込まれ、がん組織に集積します。一方、正常細胞にもLAT2などのアミノ酸輸送タンパク質が存在するため、BPAは正常組織にも取り込まれます。がん組織と正常組織におけるBPAの取り込み量や保持、組織内分布の違いが、BNCTによるがん細胞選択的な治療効果を支えています。

BNCTにおけるBPA集積の役割

がん細胞を選択的に治療する仕組み:BPAはLAT1などのアミノ酸輸送タンパク質を介して細胞内に取り込まれ、多くのがん組織では周囲の正常組織よりも高く集積します。中性子を照射すると、BPAに含まれるホウ素と中性子との間で核反応が起こり、そのエネルギーによって、BPAを多く取り込んだがん細胞を選択的に傷害します。

治療前のBPA集積の評価:治療前にFBPA-PET検査を行うことで、腫瘍にBPAがどの程度集積するかを画像で確認できます。この情報は、腫瘍と周囲の正常組織へのBPA集積の違いを評価し、BNCTの適用や治療計画を検討するために活用されます。

現在のBNCTが抱える課題

BPAはLAT1を介してがん細胞内に取り込まれますが、LAT1にはBPAを細胞外へ運び出す働きもあるため、がん細胞内に長くとどまりにくいという課題があります。BNCTの効果を十分に引き出すには、中性子の照射中もがん組織内のBPA濃度を保つ必要があることから、現在の治療ではBPAの持続点滴が行われます。
一方、BPAを持続的に投与すると、正常組織へのBPAの取り込みも増え、中性子照射によって正常組織が影響を受ける可能性があります。特に腹部には放射線の影響を受けやすい臓器が存在するため、周囲の正常組織への影響を抑えながら、膵臓がんなどの深部臓器がんを治療することが、BNCTの適用拡大に向けた大きな課題となっています。

Technologies 技術

深部臓器がんへのBNCT適用を可能にする最適化技術
〜BNCTに適した新規LAT1阻害剤を、 BNCT増感剤として実用化する

BNCTを、より有効かつ安全な治療へ

私たちは、LAT1がBPAをがん細胞内へ取り込むだけでなく、細胞外へ運び出す性質にも着目しました。
BPAをがん細胞内に保持しながら、正常組織からのBPAの排出を促すことで、がん組織と正常組織とのBPA濃度の差を広げ、BNCTの効果と安全性を高めるための新たな薬剤と投与法の研究開発に取り組んでいます。

BPA投与後のLAT1阻害薬によるがん細胞へのBPAの保持

まずBPAを投与し、LAT1を介してがん細胞内へ取り込ませます。その後、LAT1を選択的に阻害する薬剤を投与することで、がん細胞からのBPAの排出を抑え、細胞内により長く保持します。
一方、正常細胞では、主にLAT2などのアミノ酸輸送タンパク質を介したBPAの移動(細胞外への排出)が保たれるため、時間の経過とともに正常組織内のBPA濃度が低下します。これにより、がん組織と正常組織とのBPA濃度の差を広げ、正常組織への影響を抑えながら、がん細胞に対するBNCTの効果を高めることを目指します。

膵臓がん・胆道がん・肝臓がんなどの腹部の難治がんへの適用拡大を目指す

私たちは、がん細胞内へのBPAの保持を高める新規LAT1阻害薬を、次世代のBNCT増感剤として開発しています。この技術によって、これまでBNCTの適用が難しかった膵臓がん、胆道がん、肝がんなどの深部臓器がんに対する、新たな治療法の実現を目指します。
新規薬剤の開発と投与プロトコルの最適化を進め、大学、医療機関、企業などの関係機関と連携しながら、治療が難しいがんに新たな治療の可能性をひらいていきます。

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